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プロジェクト概要

IUGONETプロジェクト発足の背景

超高層大気中に見られるグローバルな諸現象は、太陽紫外線や太陽風からのエネルギー注入、大気波動による下層大気からのエネルギーや運動量の流入、電離圏・プラズマ圏での電磁エネルギー輸送、プラズマ流、化学反応などの多様なプロセスが複雑に絡み合った結果として観測されます。

そのため、超高層大気における長期変動のメカニズムを解明するためには、全球規模の地上観測ネットワークによる様々な観測データ (例えば、大気の風速や温度、オーロラ画像、地磁気、太陽活動指数等) を組み合わせた総合的な解析が必要になります。

しかしながら、これまでは、このような超高層大気の地上観測データは、観測を行った機関ごとにデータベース化され、公開されるものの、その多くは個別の観測・研究に関係する特定分野での利用に留まっていました。また、一部の観測データについては、観測者と周辺の限られた研究者のみによる利用に終始し、公開されないまま記録メディアの中に埋もれるケースもありました。

IUGONETプロジェクトの目的・狙い

IUGONETの第三期(2021年度から)には3つの活動方針があります。

  1. 太陽地球系物理学(STP)分野のサイエンスの推進

    • 国内外のSTP分野のプロジェクトで得られたデータの公開を支援する。
    • 多種多様なデータを複合的に扱えるように研究基盤を強化する。
    • STP分野の共同研究を推進する。

  2. 国際貢献・人材育成

    • 講習会やアウトリーチ活動を通じて、STP分野の若手研究者の育成に貢献する。
    • アジア、アフリカ等の国々の研究者と協力し、国際ネットワークの構築、国際共同研究を推進する。

  3. 新しい領域研究の推進

    • データ科学の研究者と連携し、STP分野のデータにデータ科学の手法を応用する。
    • 異分野、隣接分野の研究者と連携し、新しい研究領域を開拓する。

第一期(2009年度~2014年度)は、総合的な解析を推進するために、観測データベースと解析ソフトウェアを開発、公開しました。

第二期(2015年度~2020年度)は、第一期に開発したデータベースと解析ソフトウェアを更新し、新しいデータサービス「IUGONET Type-A」を公開しました。これらデータ、サービスの利用を推進し、若手研究者の育成、及び、超高層大気分野の発展に貢献しました。

第三期(2021年度~2026年度)は、これまでの活動をさらに発展させ、データ公開・解析基盤をより強化し、高解像度データ、シミュレーションデータ、再解析データを含む多様なデータの公開、総合解析を支援します。また、これらの活動をアジア、アフリカ、南米等に展開し、国際ネットワークの構築、国際共同研究を推進します。

期待される効果

メタデータを集約してデータベース化したシステムは、分散管理された多種多様なデータへのアクセシビリティを高め、様々なデータを組み合わせた総合解析、分野融合研究を促進させる基盤として期待されています。IUGONETがターゲットとする超高層大気物理学分野では、グローバルな複合系における多層間の相互作用およびそれにともなう擾乱発生の仕組み、地球温暖化問題に関わる長期変動メカニズムの解明とその予測など、地球惑星科学分野に一層の進展をもたらすことが期待されます。また、様々な分野のメタデータ、データベースを接続することは、例えば、古書籍データに記録された現象と物理データの関係の解明など、分野の壁を越えた新しい発見を生み出す可能性を秘めています。