一般成果論文

記事掲載日:2021年2月9日

高エネルギー粒子降り込みが超高層ナトリウムに与える影響

津田卓雄 (電子通信大学)

Relationship between Na layer and CNA variations observed at Syowa, Antarctic
Earth, Planets and Space, 73, 7, doi:10.1186/s40623-020-01335-7, 2021

  地球超高層領域には、流星起源の金属原子が存在している。金属原子の一種であるナトリウム(Na)の分布高度は 80-110 km 付近であり、この高度領域は中間圏・下部熱圏、並びに、電離圏D、E領域に当たる。極域では、オーロラ現象の主な原因である磁気圏からの「高エネルギー粒子降り込み(Energetic Particle Precipitation: EPP)」は、しばしば電離圏E領域(高度 90-130 km)、さらにはD領域(高度60-90 km)まで侵入する。このとき、高エネルギー降下粒子が超高層ナトリウムにどのような影響を与えるのか、オーロラ活動に伴う大気組成の変動過程を理解する上で興味深い研究テーマのひとつである。


  本研究では、南極昭和基地(69.0ºS, 39.6ºE)における地上総合観測により、高エネルギー粒子降り込みによる超高層ナトリウムの変動を統計的に調査した。得られた結果は、高エネルギー粒子降り込みがナトリウム層のトップサイド周辺におけるナトリウム消失を誘発していることを示唆した。この高エネルギー粒子降り込みによるナトリウム減少は、明け方の時間帯でより重要になることが明らかとなった。

ナトリウム密度は、銀河雑音吸収(CNA)の増加に伴って減少する傾向が見られる。これは、高エネルギー粒子降り込みがナトリウムを減少させたと考えられる。